彼は笑うんだ。
何時でも、何処でも、何をしていても。
あの清らかな笑顔で、此方を真正面に捉えて。
私は、そんな彼が大嫌いだった。


■


「…ん…ぁ、ぁあ……!」
「素敵な格好ですね、神父様? 信者が見たら泣いて喜ぶでしょうよ」

町外れの小さな教会。
古びた其処に訪れる者など片手で足りる程にしか居らず。
ただ1人の神父が祈りを捧げるばかりだった。
その神父は、法衣を羽織るだけに留め、あられもなく足を開いているが。

「…も、やめッ…んぁっ…」

四つん這いに床へと伏せて、高く尻を上げる姿を強要されている。
その顔には情欲の色が濃く、責め続けられた思考は瞳の焦点すら合わす事も困難のようだ。
性器には灰色の触手が絡み、また後孔にも触手が蠢く。
ひらすらに快楽を与えては、吐精させ、また快楽を与える。
それの繰り返しは既に拷問の域に達しかけていた。
だが、其れを観察するような鋭い視線で見ていた男性…背に生えた黒い羽根で異形と知れる。
黒い髪に瞳、纏う衣服さえも黒く、人外の美貌は正に悪魔そのものだろう男性は、それだけでは気が済まないようだ。

「おや…私の可愛いペット達は お気に召しませんでしたか? ほら、お前達。神父様は物足りないようだ」

男の言葉を合図に触手が激しく挿入を繰り返す。
グチュ、と鳴る水音は触手から滲み出る粘液か、それとも神父自身の精液か。
白濁に混じり合ってどちらとも分からない。

「ア、ぁ…あぁぁあ………!!」

屹立した性器は触手に戒められて達する事を禁じられ、後孔を責められて、ただ女性のように泣き叫ぶ。
背徳の快楽が其処にあった。
もっと、と強請る様に浅ましく腰を捻り、振り、更なる快楽を欲する神に仕えし清き者。
口から滴る唾液が床へと垂れ落ちた。
射精を禁じられた自身は解放を求めて先端をパクパクと開閉させる。
同時に神父自身の口も、酸素を求めて大きく開閉する。瞳には大粒の涙が浮かび、流れ落ちた。

「どうです、此れくらいスれば満足頂けますか?」
「…して、許して…くださ……もう…」

誇りなど欠片も無く、ただ開放を求めて泣き縋る。
其処には虚ろな瞳だけが在って。
黒い悪魔、現在の支配者足る青年は柔らかに微笑を浮かべて、冷徹に言い放った。

「お断りです」

今度は彼の腕を後手に戒めるように触手たちへと指示を出す。
支えていた腕の2本とも自由が奪われて、腰は高く上げたまま…肩で上半身を押さえるような息苦しい体勢となった。
散々に暴行させていた触手を退かせ、今まで与えられていた快楽が嘘の様に退く…但し、性器を堰き止める部分は そのままに。
触手を受け入れ続けていた後孔は真っ赤に捲り上がり、口を大きく開いてその内部までを見せている。
ヒクつく動きは快楽を欲するが為だろう。
責め立てられていた動きが無くなり、今度は物足りなさに喘ぐ。
狂ってしまいそうな、喪失感。

「…ぁ、あ…くッ……ん……!」
「ねぇ、神父様…私が悪魔だって、初めて見た時から気付いていたでしょう?」

悶える その姿を眺めながら、一人呟く。見つめる先は、神父か…それとも過ぎ去った遠い記憶か。

「羽根だって隠して、普通の人間と同じ風を装っていたのに貴方は触れる事を躊躇った。私が穢れた存在だから」
「……ちが……ッぁ、は……」

フル、と首を振りたくも固定された体勢が災いして為せない。
悪魔は、ただ静かに嗤った。
嘲笑にも、自嘲にも、取れる美しい笑みで。

「優しい優しい、とても信心深い神父様。今までは神の加護とやらで触れられませんでしたが…でも、堕ちた今なら」

そう言って悪魔は神父の背後に立つ。
それからの行動は容易に予想が付いて、神父は足掻く。
だが、戒められた身体での逃亡距離は数センチが精一杯。力強い腕に一瞬で引き戻された。

「逃がしません」
「…ぁ…っ……」

傲慢な言葉すら耳元で囁かれれば、全身性感帯のように敏感になっている神父の身体は反応を見せる。
気を良くした悪魔は、ク、と口端だけで笑みを浮かべ、衣服を寛げる。既に怒張した性器が外気に触れた。
神父の尻の間、其処に潜む菊花へと押し当てると、神父が身じろぐ。
触手など足元にも及ばない、それはいっそ凶器と言える大きさをしていた。

「やめ…ッ許し……止めて下さい……!!」
「止めても構いませんが…」

背から腕を回して、顎を固定する。
涙、鼻水、粘液、精液…正確な比率は分からないが、様々な液体でグシャグシャになった顔を上げさせた。
磔にされたイエス・キリスト像が此方を見下ろしている。

「…そんな顔で此れからも神に仕えるおつもりですか?貴方は既に欲を知った、男の味も知ったでしょう。後ろがヒクついていますよ」
「私っ、は…ッ…」
「神など捨ててしまいなさい」

堪えるのも限界な身体、深い挿入を今かと待ち受ける菊花の上を相手の怒張が滑り行けば理性を保つ糸が切れかける。
甘美な、悪魔の誘惑。
傲慢な響きが、甘い囁きに変わった。

「私の傍に居ると誓ったならば、毎夜でも快楽を与えて差し上げます。全ては貴方の望み通りに」
「…わ、私の…望み通り……」
「そう、貴方の望み通りに」

グチュリ、と先端を捻じ込ませる様に腰を進めると、僅かに広がる菊花。
だが、それ以上は進入せずに焦らした挙句、抜く。
それを繰り返すと神父の顔に今までとは違った表情が浮かんだ。
理性が切れた本能だけの表情、肩越しに悪魔を見つめて浅ましく強請る。

「…い…、居ます…傍に居ます…ッ」

だから。
そう続く言葉は貫かれた衝撃で嬌声に代わり、教会の中に響き渡った。
焦らしに焦らされた後孔が熱棒で押し広げられる。

「ひ、ィ…ぁ、ぁああ……!」
「挿れただけでイッたんですか?…我慢させ過ぎましたか」
「ぅ、あ…ふぁ……ん…」

事実を事実として伝える悪魔の声は神父には聞こえず、ただ悦びの声が其の口から零れる。
達して萎えても可笑しくない筈の性器は未だ尚、天を仰ぎ、白濁を流す。
接合部から鳴る水音は、早く、と強請っているようで…悪魔はその様子に笑いながら腰を掴むと、遠慮や思慮など微塵も感じさない動きで滅茶苦茶に突き上げる。

「ほら、此れが欲しかったんでしょう?」
「んン…ッはイ、ぁ………っ」

神父の性器に絡められた指先が白濁で汚れていく。
絶え間無い刺激にビクビクと脈打つそれは二度目の絶頂を求めている。
…が、触手で戒められたままの自身を愛撫されても拷問に近く、泣き叫ぶ声が高く上がった。

「……ぁ、いぁあぁあああ!!」

快楽は確かに感じている。
だが、快楽の先が無い。感じても、感じても、達する開放感が其処には無かった。
ガクガクと身体を支える力すらも無くなって来た神父は悪魔に腰を支えられて何とか体勢を保っている。
口端からは涎が流れ落ち、頬を涙が伝う、下半身は白濁に塗れて何処もかしこも濡れていた。





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