「ちょ…ッや…ん…!」 相手の腰を力任せに引き寄せると無理矢理に口を塞ぐ。 何時も生意気な彼の口から零れる甘い吐息に一瞬、我を忘れた。 そんな己を誤魔化すように意地の悪い笑みを浮かべてからかいの言葉を口にする。 「…実に可愛らしい御声で」 濃厚な口付けの後、唇と唇を繋いだ銀糸を再度交わしたバード・キスで舐め取ると 真っ赤に染めた顔を隠すように反射的に腕をかざす相手に尚、笑みを深める。 「…ッ離せよ!」 此方の表情を見たからか、それとも先程の行為に我慢がならなかったからか…。 相手の去り際、力任せに思いっきり突き飛ばされると不意を付かれた事も有り。 細身と言える己の躯は簡単に後ろへとよろめき座り込んでしまう。 同時に頭に乗せていたシルクハットが宙を舞い、地へと落ちた。 「おやおや…」 情けない己の体勢もだが、相手の去り際の慌てっぷりに苦笑を溢し、立ち上がる。 落ちたシルクハットを拾い上げると付いた土を軽く払ってポスリと頭に乗せながら呟いた。 「…さて、今日のティータイムには何を飲みましょうか」 fin.