星が落ちる。

天を焦がす、炎が上がる。

予言の言葉が現実となる。

さぁ、生まれ来る災いを祝おうじゃないか。

我等がAliceの生誕を!


【-star dast night-】


不思議な夢を見た。
女性が何かを読んでいる、どうやら厚さの薄い本のようだ。
片手の掌に収まってしまいそうな程の小さな本。
季節は春。場所は木陰の下で、涼みながら。
傍らに居るのは…姉、なのだろうか…本を読む少女を仕方無さそうな、慈愛に満ちた表情で見つめていた。
そして、手の内の本に落とされていた視線が此方へと向き、口を開く。
其れは夢の中、そんな確信が有るにも関わらず…少女は確実に此方を、見ていた。

『早くおいで…皆、待ってるから』

―― 皆、って誰?…何処で?

何故、何処で、誰が。
そんな子供のような疑問を立て続けに、問う。
そうすると、困ったように微笑する彼女が、バイバイと手を振った。
空間が歪み、少女の立つ地面に引き寄せられていく。
バイバイと別れを告げられているにも関わらず、近付く距離に違和感を覚えたが、其れ所では無い。
自らの身の危険に其れ以外の思考が停止した、喉から零れる悲鳴だけが響き渡る。

「うわぁぁーッ………ぁ?」

己の悲鳴に目を覚まし、汗だくの前髪を掻き揚げながら上半身を起き上がらせると其処は見慣れぬ真っ白な部屋。
確か、昨日は我ながら、魔物の巣窟デスカ、と問いたくなるような自室の万年床で寝たはず。
どう言う事だ?と首を傾げるも混乱は加速するばかり、問いたくても問う相手すらいない。

「わっかんねェ…」

ズキリと痛む頭を押さえて、耐える。呟いた言葉は辺りに霧散し、消えていった。
取り合えず、現在地を把握しようとベットから抜け出した。
服装を見下ろすと、やはり真っ白な…ネグリジェと言ったら良いのか、其れともドレスか。
少なくとも、もうすぐで18歳を迎える青年が着るような代物では無いと言う事は理解出来た。
唯でさえ、己の身体は平均より筋肉質でガッシリとした印象が拭えないのだ。

「あー…くそ…何が何だか…」
「まぁ、いきなり連れて来られては当たり前ですよねぇー」
「うおぉぉぉぉ!?」

いきなり現れた正装の青年。言葉通り、何も無い空間から出現した。
男らしい野太い声で悲鳴を上げながら、慌てて距離を取る。
其の青年はニコニコと愛想は良いが、何処か掴みにくい笑顔で此方を見ている…否、観察している。
上から下まで、更には少し角度を変えて。
そして困ったような笑みへと種類を変えて、ポツリと一言。

「…変態サンなのは予想外でしたが」

あぁ…違う、と言えたらどんなに楽だったか。
筋肉晒して、真っ白なレースヒラヒラの服を纏う自身の姿では、其の反論も難しかった。



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